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トランスフォーマー:ビーストウォーズ ビーストウォーズ再考1

トランスフォーマービーストウォーズ」より

 

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ビーストウォーズ再考

突然だがあなたはビーストウォーズをご存知だろうか?と聞いて、少なくともトランスフォーマーの事を頻繁にポストしているこの辺境の地ダゴバのようなブログに足を踏み入れているあなたがビーストウォーズを知らないという事はあまり想像ができないのだけど、敢えて説明しよう。

ビーストウォーズは1996年(国内では97年)から始まったトランスフォーマーの新基軸であり、90年代前半~中期までのトランスフォーマーG2にて若干低迷した(国内では勇者シリーズに立ち位置を完全に奪われていた)TFブランドを世界的なブームへと引き戻したモンスターコンテンツである。

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初期の玩具に付属するギミック「ビーストマスク」。*海外ではミュータントヘッド

当初の構想ではビーストへと擬態した彼らのメインの顔はこちらで、このビーストマスクを外すことで本来のTFとしての顔が出てくるという設定だったようだ。アニメ展開でも戦闘時の武装として一時は検討されたようだが結果としてオミットされた。

これまでのTFとは完全にかけ離れたルックスのこちらの新基軸はその後のビースト戦士へとしっかりと継承されていき、BW後期へと向かうに連れてビーストマスクのような禍々しい顔が通常の顔とされる戦士が増えていく。初期の玩具はこの転換を迎えるに当たっての橋渡しの時期、そんなわけで2つの顔が同居していたのだ。

 

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国内でも玩具が売れすぎて品切れになるほどの人気となり、海外展開の新作を放映するまでの"ブランクを埋めるため”に和製ビーストと呼ばれるビーストウォーズセカンド、ビーストウォーズネオまでが「日本製作」で作られるほど。トランスフォーマーの映像コンテンツを基本的に輸入に頼っている昨今と比べてみてもその異常な熱量で、とんでもないブームであったことは正に火を見るより明らか。

こうして爆発的に拡大したビースト戦士達の大進撃だが、凄まじい勢いで消費されていったコンテンツや玩具、日本と海外での放送スケジュールによって生まれたブランクや国内カーロボットの躍進、一般的にビーストウォーズに刺された「とどめ」と言われるビーストマシーンズ(国内ビーストウォーズリターンズ)と徐々にその人気は先細っていき世界規模での動物たちの戦争は終止符を打つことになる。

 

叩かれまくるよ、ビーストウォーズ

盛者必衰、爆発的な大ブームとボロ雑巾のようになるまで使い倒す事で作品自体が不本意な結末を迎える事は、こと玩具界では何ら珍しいことではないのだが、しかしながらビーストウォーズというコンテンツは今も世界中で愛されておりその人気は折り紙付き。

現在海外で展開しているパワーオブザプライムにて発売が予定されているオプティマスプライマル/オプティマオプティマスはファンの投票で選ばれた「プライム」の商品化ということで、海外においてビーストウォーズが未だ根強く人気な事が分かるかと思う。

 

が!だ。しかし、なのだ。

とても残念なことに、日本国内において「ビーストウォーズ」は高確率で論争の引き金となる存在であり、火種のような扱いを受けることが多々有る。

国内でも空前の大ブームを巻き起こし、後のカーロボットを生み出すまでの土壌を築き、「トランスフォーマー」というコンテンツの布教・拡散に一役どころではないほどに尽力したではないか。一肌どころじゃないほどに脱ぎまくった(動物だからそもそも全裸だね!)というのに、トランスフォーマー作品として受け入れられないこともしばしば。

では何故国内においてビーストウォーズはこうも扱いが悪いのだろうか。

 

声優のはなしばっかだよ、ビーストウォーズ

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俺は一気に核心を突くぞー!ジョジョーッ!

という訳でビーストウォーズの最大のタブーに、直接的に切り込んでいこう。ビーストウォーズが常に論争を巻き起こすのは間違いなく、

「ビーストは声優のアドリブが最高」

といった、一部、あるいは多くのファンがストーリーやキャラクターではなく国内のみで展開された声優のアドリブを最も評価している部分に起因する。

悪のリーダーであるメガトロンは未だに声優の名前を採った千葉トロンと呼ばれ、ゴリラのコンボイの話をすれば「イボンコペッタンコ」の話を嬉々として持ち上げる。ていうか、ペッタンコになったのはリターンズ(マシーンズ)のゴリラでBWやメタルスのゴリラじゃないからね、当然ながらこういう事を言う人の大半はリターンズ見てない。

これはもう明白どころではないほどの事実であり、多くの絶賛が声優のアドリブへと帰結し、多くの批判もまた声優のアドリブへと帰結する。

 

日本版ビーストウォーズは公式MADなのか?

声優達のアドリブの功罪を語る際に往々にして登場する音響監督の「岩浪美和」という存在。猪木がタバスコを国内に持ち込んだレベルの"誰でも知っている駄トリビア"と並ぶレベルで有名な話として、ビーストが国内に輸入された際にこの御方が

「内容の暗さと難解さから日本では受けないと判断し、原作から雰囲気を変えコメディタッチへと独自に脚色、声優のアドリブを容認した」

といったエピソードがある。今でもビーストウォーズが配信される等のニュースでは「あの伝説の!最強の!悪乗りアニメ」「声優無法地帯」等の"レッテル"と共に取り沙汰されるほど。

しかし、当時の小学生達に”かの悪乗り”はクリティカルヒットした事は紛れもない事実。こうして、国内ビースト肯定派の主張の根幹はこの岩浪監督の金言「暗すぎるから明るくしたった」を基軸に展開され、国内ビースト否定派はこれに対するカウンターとして「行き過ぎたアドリブがストーリー性を破壊している」や場合によっては「そういうビースト肯定派が嫌い」といった拗れ具合へも発展している。

 

海外で日本版ビーストウォーズが糾弾されている説、割りとマジ

ちなみにこれらの論争にてたまに語られる

否定派の間の3種の神器の一つとも言える「海外の反応」だが、多くの人の口から語られる割には「それどこソース?」な、わりと実態を持たないことでも有名でもある。

しかしながら、90年代後半~00年代前半、友人たちが次々とビーストを卒業していく中で、ネットの急速な拡大の恩恵を受け独りネットを駆使して海外ショップからビーストマシーンズ(国内ビーストウォーズリターンズ)の玩具を個人輸入していた僕は、そんなおぼろげな海外ファン激おこ説を検証するために「Beastwars japanese dubbing」あたりの単語でwebの海へと潜行していたのだが。

これがわりとマジだった。完全なアンケートをとってパーセンテージを導き出したわけではないので、結局は体感値となってしまうのだけど、海外のビーストウォーズファンは結構な確率で日本のビーストウォーズをs●ckだとかstupid dubbingだとかFから始まってKで終わる単語であったりとか、そんな感じのパンチのある言葉でこき下ろしていたのだ。

それって所謂海外版「大きなお友達」のお話でリアル世代の言葉ではないでしょう?とも思われる方もいるかも知れないが、そもそも僕やあなたのようなビースト世代(ビーストウォーズを小学生で体験した世代)も今や完全に大きなお友達へとトランスフォームしているように、海外で国内翻訳を糾弾する大きなお友達の諸君も僕らと同じようにテレビの前に正座をしてBWを見ていた当時の少年少女たちで構成されているのだ。

 

あぁ、マジだったんだ、と真実を知る中でそんな罵倒と共に語られる彼ら海外ファンの情熱的な訴えの終点は共通していて

ビーストウォーズ(だいたいメタルスまでの事を指している)はとてもいいキャラクターとストーリーを兼ね備えた素晴らしいアニメーション作品なのに、日本の馬鹿げた翻訳はそんな彼らビースト戦士のキャラクター性を破壊していて、そのせいで物語が破綻している」

といった内容。

そう、つまりアドリブがどうこうではなく、国内ビーストウォーズの問題点はキャラクターの改変や雑な扱いによるアイデンティティの破壊で、それに伴って本来語られるべき重厚なストーリー・それぞれのキャラのドラマが正常に機能していない事がなによりも問題なのだ。

 

イボンコペッタンコがどうこうとか、そういうビーストファンが嫌いだとか。これらのどこがビーストウォーズの本質に触れているのだろうか?国内ビーストウォーズでの問題の本質はストーリーのメインラインがしっかりと語られていないという悲劇が生み出した過小評価なのだ。

ビーストウォーズは挑戦的な新基軸(ビースト)や登場するキャラクターの群像劇、過去のG1世界とリンクしていく重厚なストーリー、更に当然ながら玩具としての革新性を兼ね備えた素晴らしい作品なのだが、いつまで経っても国内ではイボンコペッタンコヘイヘイお馬鹿とそれらに嫌悪感を抱いてビーストウォーズを否定するお馬鹿の、あほあほウォーズ真っ只中で、お前らは400万年この戦争を続ける気なのか!?400万年待つレーザーウェーブの気にもなって考えてみようぜ。

ということで、本来の意味でのビーストウォーズの楽しさを再考してみようではないか、と。そういった啓示を創世神プライマスから受けたわけです。声優無法地帯()とかドヤりながら言うのは本当に薄ら寒さしか無いのでもうやめにしようじゃないか。

 

そんな訳でビーストウォーズ再考。

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国内でもMPダイノボットの発売が夏に決定しており遂にサイバトロン(マクシマルズ)の初期メンバーのリメイクが終了する。一部では実写版のリブートが噂される中で、「じゃあ、もうビーストウォーズ実写化しようぜ!?マイケル・ベイは抜きで」と勝手に思っている僕が、何回かのポストに分けて「では、海外のビーストファンがそこまでに情熱的になれるビーストウォーズの本質的な魅力とはなんなのか?」を纏めていきたいと思っている。

これはつまりビースト直撃世代である僕自身の愛憎の解体でもある。ここまで書いておいて何だが、僕はビースト放送前の玩具展開からどっぷりとビーストウォーズにハマり、ビースト放送時はそのアドリブに爆笑し、一番のお気に入りキャラクターは国内ビースト最大の戦犯とも呼ぶべきラットルだった。

その後本来のビーストの物語を知ったときの常識が崩壊するような虚無感、そんな20年超えのビーストウォーズへの愛憎の解体を始めたい。