ヒーローバンク・アーケード:稼働終了 ヒーローバンク・アーケード可動終了と感想まとめ
ヒーローバンク・アーケード『稼働終了』より
極暫定的だがヒーローバンク・アーケードは稼働終了を迎えた。
7月1日に公式ページから告知が出たヒーローバンク稼働終了のお知らせ。その撤去は地域により異なり12日にて終了とするところ等の差異があったものの、先日非公式対戦会が行われたセガ秋葉原一号館様にて本日15日に稼働終了となったため、悪あがきをやめて認めざるを得ない形になった。悪あがきだ。僕はその可能性を見出したくて、ひらすらにプレイを煽るような悪あがきのブログを7月1日の発表から、いやムシキングの稼働が発表された頃から必死にポストしまくって来た。
しかしながら、あれほどヒーローバンクのファンの思いに対して熱い対応を頂いたゲームセンターにて稼働が終了となったのだ、つまりヒーローバンク・アーケードは稼働終了を迎えた。
ロケテスト:ナナメっているSEGAの超大作
キッズアケゲーの中の一つという認識から足を運んだ2014年2月の葛西でのロケテストでセガびいきの僕が「何コレ超やばくない?ヒーローバンク…若干斜め上だけど、その角度が最高にセガで最高じゃない?最高じゃない?」と魅了され、その後4月から放送となったアニメの完成度の高さに完全にヤラれ1年間大はしゃぎさせて頂いた。
葛西ロケテストでのカード。このロケテではヒーロー着の「ランク」部分がノーマル・トールなどの「体のサイズ」で表現されていた。また、背面はキャラクター紹介ではなく、ゲームのワンポイント解説。
ヒーローバンクのロケテストに行ってきました - くるめろとは違う
*その頃のブログ
チャプター1~2:ヒーローバンクの世界
ヒーローバンクには夢があった。公官庁や各種職業を代表する企業とのコラボヒーロー着や、ゲーム・アーケード・トイの連動、漫画・アニメの連載・放送。それらが連動することにより、僕やあなたのいる空間は次元を超えてカイト君達の存在する勝堀区とリンクする、そんな世界が待っているはずだったのだがタイミングが悪かった。あとセガの斜め上具合がセガだった。つまり最高だったが、最高すぎて周りが付いてこれなかった。
こんにちは、これを読んでくれているハイパーソニックな諸君、僕やあなたは時代を10年先取りしてしまったようだ。
チャプター3:振るわない人気に対して下した英断
稼働後、チャプター1~2にて完全に不人気アケゲーとしての烙印を押されたヒロバンAC。随所で目にするネガティブなワードに「フフ…僕は10年先を生きているんだぜ…」と必死にヒロバンACは面白いと思い込みたくて仕方がなかった。
そんな不振に対してセガが下した「全国スゴロク・おひねりスロットの増築」への決断。辛い状況下にあるはずの中で、レアヒーローをばら撒くなどの子供だましな対応ではないこの覚悟に僕は惚れてしまった。SEGAどうかしてるぜ。
ヒーローバンク・アーケード ロケテスト開催中の「ヒーローバンク・アーケード チャプター3」にてSEGAの本気を体験しろ - くるめろとは違う
*その頃のブログ
このチャプター3はそれまでのヒロバンACの若干の退屈さを完全払拭、必死になって通い始めたのもこの頃だ。が、惜しむらくは稼働開始段階でこのレベルへと到達していなかった部分。稼働開始時にスゴロク等の要素が詰まっていれば違った未来があったのかも知れない。
チャプター4:振りきれるボスの強さ
そんな全国スゴロクを踏襲したチャプター4。徐々に上がり始めた難易度が「不死鳥・ザ・ウルフ」の登場で突如振りきれる。あまりにも凶悪なボス「八神」の登場を皮切りに毎週更新されるアニメミッションも異常難易度へと上がっていき「唯でさえ少ないプレイヤーが減っちゃうよぉぉお」と若干の不安に苛まれたが、この難易度の振り切れ具合がひとつの起点になった気がする。
この異常な難易度に多くのファイトレーダーが燃え上がったのか、極個人的なお話で申し訳ないのだが、設置したアクセス解析にこれまで皆無だった「ヒーローバンクアーケード 攻略」等のワードが上がり始めた記憶がある。
あれ?これむしろ前よりプレイヤー増えてませんか?
この辺りから「常識外れの強さのボスに皆で挑む」ような一体感というかが生まれ始めたように思う。
エクストラミッション:ギャンブル性と堅実過ぎるシステム
昨今のゲームのトレンドでもあるガチャ要素というか、つまりギラギラと輝くウルトラレア等のカードの引きであったり、運要素の強いカードのカスタム製であったり。そういった射幸心を煽るギャンブル性の高い手段で手に入ったカードの強さと、それを自身の強さだと程よく錯覚させてくれるような技術介入具合。キッズゲーの中ですら「激アツ」等のパチンコじみた煽りが氾濫する中で、ヒロバンACはあまりにも堅実だった。
カード取り出し口からギラついたカードが出た瞬間強くなれるわけでもなく、プレイを重ねるなかでの運要素でカードが豹変していくわけでもない。
それぞれのヒーロー着の強さには限界があり、ヒーロー着3体分×4箇所で構成されるパーツ、全12枠の中で思考を巡らせ、使用するヒーロー着の長所を探し作戦を立て、凶悪な難易度の敵へと挑む。ゴリ押しの通用する世界ではなく、何度も負けてその敗因を考え、新たに対策を立ててまた挑む。子供版アーマードコアかよ、ヒロバンACは!と突っ込みたくなるほどに地道で、ここに射幸心を煽る運ゲー要素は全くと言っていいほどなく、地味な努力の積み重ね。修行のように重ねるプレイ。
さらに付け加えると、僕はこれまで幾らかキッズゲームをかじってきたのだがヒロバンACのボスの強さは異常だ。他ゲームに登場するボスはある程度の育成や運で引いたレアカードを突っ込み無心にボタンをぶっ叩いてれば勝利を得ることは可能な物も少なくはなかったが、ヒロバンACの「対策を立てなければ瞬殺レベル」、「対策を立ててもプレイヤーの操作レベルを必要とし戦いの流れを汲み取れなければ割と普通に負ける」仕様は類を見ない極悪さ。仮にも「キッズゲー」がプレイヤーを5秒で殺すゲーム。昨今の”ボタン連打してればなんとかなる”キッズゲー界隈に喝を叩きこむような、あまりにも挑戦的なゲーム性能。
しかしながら、この努力の積み重ねこそがヒロバンACの最大の魅力だと、僕は思う。ソーシャルゲームの隆盛で昨今無視されがちな地道な努力。バトルでボコボコにされることにより得た教訓を、リアルに経験値として積み上げ、思考し得た勝利はどのゲームでも得られない達成感があった。
惜しむらくは、そんな当たり前のことをコンシューマーゲームすらもが忘れてしまっている時代にキッズアーケードとして排出してしまったこと。負け続ける苦難とそれを乗り越える根性の構図はいかにもヒーローバンク的だが、こうしたスポ根の泥臭いスピリットは今の時代にはフィットしなかったようだ。もっと燃えろよ、時代。
今後僕の人生の中で大きな問題が降りかかった時に、大きな敵と対峙した時に僕はヒロバンACを思い出し
こんな問題、こんな敵、ザ・ダーク・オブ・マネーよりはヌルゲーだ。ヒロバンACプレイヤーナメんなよぉ!
と、何度でも立ち上がる事ができる。
最初から全てがうまくいき、簡単に超えられる壁など存在しない。負けても何度でも立ち上がる熱い魂を、僕はこのヒロバンACにて叩きこまれた。
非公式対戦会:対人戦で開かれる可能性
ムシキング控えてるし、どうもチャプター4で終わりっぽい。
そんな空気に苛まれる中で有志の方々が声をかけ実現した秋葉原セガ一号館での非公式対戦会。この対戦会を開いて頂いたおかげで初めて対人戦を体験した。強敵CPU相手のバトルとはワケが違う攻撃の読み合い、パーツの読み合い、属性の読み合いの数々にとんでもない程の可能性を感じた。ヒロバンACは対人戦こそが真価だったといえるほどに、前述の堅実なシステムが生きている。この対戦会を開いて頂いたおかげで、これまでアルティメットシャイのせいでロンリーウルフを気取り、ひたすら壁に向かってブログを叩きつけているだけだった僕にファイトレーダーさんとの交流も生まれた。
また、この大会の燃え上がりがWEBを通して飛び火し、各地でヒーローバトルラッシュが巻き起こる。この対戦会が、ムシキングへの改造手術待ちのヒロバンACを延命させたと僕は思っている。こうして秋葉原一号館のヒーローバンクが15日まで稼働し、そこで最後のプレイを楽しめるのは対戦会を企画運営された方々や、セガ秋葉原一号館の方のおかげだと思っている。本当にありがとうございました。
ヒーローバンク・アーケード:ヒーローバンクアーケード対戦会inSEGA秋葉原一号館に行ってきたよ 前編 - くるめろとは違う
その頃のブログ
サヨナラマタイツカ
僕自身、ゲームはゲームで、アニメはアニメでと区分けしてきたせいか、こういった大々的なメディアミックスに1年を通してどっぷり浸かると言うことがあまりなく、ヒーローバンクのコンテンツが生活の中から一つ、また一つと姿を消していく事で感じる喪失感が半端ではない。それだけ、ヒーローバンクというコンテンツは僕の生活の中に溶け込み、ヒーローバンクの住人たちは日常を生きていた。
この1年、僕の生きる東京は24区の構成で、(恐らく)江戸川や台東付近に勝堀区という下町の情緒と電脳機器によるハイテクが共存する区が存在した。そして、その勝堀区の小学生社長はとんでも無いクライシスに裸一貫、素っ裸で立ち向かい、勝堀区とリンクする僕の世界を何度も救ってくれたのだ。
心から御礼を言いたい。コテコテのキャラクターや、プロレスのようなファイトスタイル、金をメインテーマにする等の時代を逆行する挑戦的な、そしてあまりにもユニークすぎるピースはSEGAの皆さん、アニメスタッフの皆さん、ゲーム開発の皆さん、アーケード開発の皆さんのおかげで、その不思議なピースが絶妙にフィットし、ヒーローバンクという素晴らしい作品が生まれ、それを体験することが出来た。
本当にありがとうございました。心の底から楽しませていただきました。このアーケードを最後に全てのプロダクトが排出されてしまい残念ですが、伊原先生の描かれた全国編。フューチャーヒーローバンクの実現を心から祈り、応援しております。
その時まで、サヨナラマタイツカ。
余談
以前から何度か話題に出しているSEGAが2009年から2011年まで展開していた「ゲッテンカ」というキッズアーケードゲーム。こちらも当時は熱いファンの終了を惜しむ声に見送られ稼働を終了した。だが、昨今とある方とお話をして既に終了から4年の歳月が経っており、カードも切れてしまっているにも関わらず、今現在も稼働をしている店舗があるということを知った。
ヒーローバンク・アーケードはこの15日を境に差し押さえの塔が全国のゲームセンターに着弾し、多くの筐体がムシキングへと変貌していくわけだが、それでもまだ可能性は無いわけではないのだ。2009年のキッズアーケードが未だに稼働している。
全国的に著名なゲーセンは既にほぼ陥落、筐体を探しだすのは一苦労かもしれない。既に日本は七福神を統べる者、八神の手中にあるのだ。だが、闇は夜明け前が一番暗い。立ち上がれ全国のファイトレーダー、レジスタンス諸君。ヒーローバンク・アーケードを探し出し、君が成し得なかった宿敵の撃破を目指そうじゃないか。君が諦めずに、忘れてしまわない限り、ヒーローバンクは終わらないはずだから。