くるめろとは違う

くるめろと貴様は関係ない。

トランスフォーマー:ビーストウォーズ ビーストウォーズ再考3 設定のミニマル化とBWのバックボーン編

トランスフォーマービーストウォーズ」より

 

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Too fast to die(スクっとフォームっ!)

ビーストウォーズを一度解体して再構築するんだぜ!と意気込みお布団から飛び出して即座にブログを2件ポスト、「やるんだぜ、やってやるんだぜ…いつかな!」と気がつけば早2ヶ月。

時の流れは早いものでワタクシの「やってやるぜ」もこの2ヶ月で気がつけば「やってやろうと思っていたぜ、あの頃は」へと変化し、その間、のんべんだらりんと体たらくの限りを尽くしていたかと思ったら2018年も下半期に突入していた。皆様如何お過ごしでしょうか。

最近は色々な理由にかこつけてだいぶかっこ悪イージーだったよね。気がついたときには手の震えで”かっこイージー”も変形させられなくなってしまうその前に。(スクっとフォーム!)そんな訳でビーストウォーズ再考3つめの記事を書っこイージー・書っこイージーと引っ張り上がってまいりました、私です。ブン、ブン、ブン。


カッコイージー!ロストエイジ!シリーズのうた トランスフォーマー transformer

 

この記事は下記のポストの続きなんです。

トランスフォーマー:ビーストウォーズ ビーストウォーズ再考1 - くるめろとは違う

トランスフォーマー:ビーストウォーズ ビーストウォーズ再考2 キャラクターの鬼改変ーマクシマルズ編 - くるめろとは違う

 

MPビーストメガトロンが来る…ッ!

桃栗三年柿八年というが、大学3年生だった僕が3年の歳月を経ても大学4年生だった事に対して(完全なるフィクションです)、トランスフォーマー界での2ヶ月となるとたったの2ヶ月で色々と状況は変わっているもので。以前のポストから

と、随分とビーストのムードが色濃く漂いだしていて、今がめちゃくちゃ旬。

上記のうち2つのニュースはそれぞれのリンク先でぼちぼちと触れたりしていたのだけど、先日開催されたおもちゃショーのアナウンスからMPメガトロンに更なる進展が。

なんでも今回のメガトロンは装甲を取り外すMP史上初のギミックが搭載されていて、劇中にて登場した就寝時の姿を再現可能なのだとか。

さらに最近タカラトミーさんがどハマりしているらしい「音声ギミック」も30種という度を越したレベルで盛り込まれるそうだ。このタカトミの音声ギミックブームはアンコール版リターンズコンボイでも登場し

試聴サウンド(リターンズコンボイ)|トランスフォーマーオフィシャルサイト|タカラトミー

こちらのページより音声を視聴できるのだけど、

「よーし!今日はラップだ!」からの「イボンコペッタンコ、イェーイ」で、まあそうなりますよね。じゃあせっかくだから俺はこの啓蒙活動(という名の街頭演説)を再開するぜ!

 

ストーリーのミニマル化とBWのバックボーン ーユニクロンズスポーン/ヴォック編ー

時代は2020年へと向かう中で、尚も公式トイが原作キャラをパワフルにキャラ改変していることを無事に確認しつつ、以前触れた

ビーストウォーズの最大の改変は「吹き替えアドリブではなくキャラクターやストーリーの改変だ」とポストした。国外ではそのストーリー性、またストーリーを引き立たせるそれぞれのキャラクター性が高く評価される中で、猛烈なディスを受ける国内ビーストのストーリーやキャラクターの改変とはどういった部分なのか?

という点を前回はマクシマルズにスポットを当ててポストしたのだけど。

本来「生活の中にディスガイズするTFと"人々との接触"」というトランスフォーマーの一つの普遍的テーマとも呼べる部分が、言語を操れる知的生命体の欠如で大きく失われている、極めて閉鎖的な環境の中で、TF達の思想やTF同士のやり取りが色濃く描かれているビーストウォーズ

これらが国内の改変にて如何にストーリーに影響を与えていったかを、ストーリーの核となりそうなユニクロンズスポーンとヴォックの話なんです。

 

タランスという存在ープレダコンズ秘密警察+ユニクロンズスポーン

前回のポストにて「大前提としてビーストウォーズはサイバトロンとデストロンのお馴染み2陣営の争いではない」と書いた。ビースト世界では400万年に及ぶグレートウォー終結後のマクシマルズとプレダコンズという全く新しい世代によって、現在と過去・未来が交差する壮大なるサーガなのだ。

そんな大前提を一歩推し進めた次なる大前提がプレダコンズのタランス(原語版タランチュラス)という存在とその立ち位置だと思っている。

これはエアラザー女性化と並ぶ程に有名な話なのでご存知の方も多いかと思うが、タランスは上記マクシマルズとプレダコンズとはまた別の立ち位置、第3の陣営とも呼べる存在であってそのあたりのストーリーが国内盤ではグチャグチャッ!とやっつけられてしまっている。なので、国内盤でのタランスは物語の中盤からメタルスにかけてざっくりと言ってしまえば「やたらとメガトロンを出し抜いて裏切って一人逃げようとしている人」として描かれているのだが。

  

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ではタランスはどのようなスタンスでビーストウォーズへと参戦しているのか?という部分だが、彼の正体はサイバトロン(オートボット)とデストロン(ディセプティコン)の戦争が終決したことで設立されたサイバトロン星のニュー・オーダー「パックスサイバトロニア」における最高議会「ハイ・カウンシル」によって遣わされたスパイなのだ。

※パックスサイバトロニア ーマクシマルズやプレダコンズの他にオートボットディセプティコンによって構成されている。初代コンボイオプティマスプライムもこの議会の構成員

彼はメガトロン崇拝やその言動が注視されていたビーストメガトロンが率いる組織に潜入しているプレダコンズの秘密警察であって、潜入捜査をしている中で原始の地球を舞台としたビーストウォーズへと巻き込まれて行く事となる。

ちなみに前述のようにサイバトロン星は様々な派閥が集結するハイカウンシルによって統治されており、議会にはプレダコンズも所属していることからわかるように、これまでのディセプティコン=クーデターを起こす悪の集団という構図は「プレダコンズ」に必ずしも適応されるわけでない。

 

しかしながら、プレダコンズの評議会で強力な地位を持つトライプレダカスの3名は現在消滅してしまっているユニクロン(全ての世界線にて並行的にただ一人存在する破壊神)によってスポーンされたユニクロンの眷属=ユニクロンズスポーンであり、更に上記の通りプレダコンズ秘密警察としてテロリストメガトロン一派へと潜入しているタランスも実はこのユニクロンズスポーンなのだ。


Beast Wars Okay, Stupid Question and The Tripresacus Council Meeting

トライプレダカスの3名。真ん中の人が聖闘士星矢教皇(悪)のマスクに似ていると僕の中で話題に。日本語版では何故かタイムボカンのパロと化した。雑い!

 

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ユニクロンズ・スポーンと言われるとなんだかミステリアスな存在に聞こえるが、有名なところで言うとガルバトロンユニクロンズ・スポーン。

つまり、タランスはプレダコンズメンバーと見せかけたハイカウンシルの命を受けてメガトロン率いるテロリストへと潜入捜査を行う秘密警察であり、其の実ハイカウンシルにすらも反するユニクロンズ・スポーン、トライプレダカスの手先という「二重スパイ」。

つまりものすごく簡単に説明してしまうとビーストウォーズにおける勢力の構図は

マクシマルズVSプレダコン

といった単純な構図ではなく

の4第勢力の思惑が交差する非常にドラマティックな内容となっているのだ。

そんな勢力の1つである「プレダコンズ秘密警察/ユニクロンズスポーン」といった役どころを一手に担うタランスは本来非常に重要な存在となっている。

 

VOK a.k.a SWARM(G2)

前述のように4つの勢力の思想が入り乱れるドラマ性は、これまで比較的シンプルな正義と悪の旗取り合戦を中心としていたトランスフォーマーの世界に新たな変革をもたらしたが、国内においてはこの複雑さは鳴りを潜めよりシンプルな「サイバトロンVSデストロン」の構図へと独自の吹き替えによって、よりミニマルでシンプルな形へと縮小されているように感じる。※これに関してはいろいろとあるのでがっつり後述

上記の4第勢力の中でも最も国内版にてぞんざいな扱いを受けているとも言うべき「ヴォック」の存在のお話。

オプティマスやメガトロンが不時着した謎の惑星(後に地球と判明)は、ストーリー初期からあからさまな「何者かの介入」を匂わせるオブジェクトに溢れていた。これに関しては以前のポストでもある

トランスフォーマー:ビーストウォーズ ビーストウォーズ再考2 キャラクターの鬼改変ーマクシマルズ編 - くるめろとは違う

こちらの「タイガーファルコンと第三勢力ヴォック」にてサラッと触れているが、平たく言ってしまえば

エイリアンが地球を創造しその中で生命の進化をコントロール、エイリアンの目指す進化の形へと向かわなかったと判断した場合、月に見立てた衛星型の兵器で星を消滅させ再度地球の創造をリスタートする

といった事を繰り返しているエイリアンがVOK=ヴォックであり、そんな太古の地球へと墜落して火山の中腹にぶっ刺さっていたのが後のG1アニメへと繋がるオプティマス=コンボイ達を乗せいていた宇宙船「アーク」であり、その後大量のエネルゴンを求めるプレダコンズと彼らを追うマクシマルズがタイムワープを経てG1戦士たちが目覚める前の地球に墜落した、という構図になる。

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タイガーファルコンを放棄し姿を現すヴォック

このヴォックという存在は実はTF世界の現在と過去や並行する多元宇宙をつなぐ重要な存在なのだが、国内版ではやはり吹き替えが相当やっつけられてしまい「そうだね~」「そうだよ~」と繰り返す謎の存在となってしまった。

G2 スウォーム

身も蓋もない形で言ってしまえばヴォックはスウォームなんです、ちゃんちゃん。で終わってしまうのだが、これだと一部の方にとっては「ファルシのルシがコクーンでパージ」的なノムリッシュ的難解なアプローチすぎるので順を追って説明させていただくならば

進化論と創造論

G1トランスフォーマークインテッサ星人の奴隷ロボとしてのTFの誕生、ある意味では機械的な誕生=現実味の強いトランスフォーマーの起源を描いたとするならば、アメコミ(G2)トランスフォーマーはより神話性の強い起源、創造神プライマスと破壊神ユニクロンによる神話的な戦いのもとに創造神プライマスの手によってトランスフォーマーが生み出されたと言った起源を唱えた。

このアメコミ版G2トランスフォーマーにて登場したのが「スウォーム」という超凶暴なダークマター的生命体だ。

スウォームの起源

前述のようにG2におけるTFの起源とは来るべきユニクロンとのアポカリプスの為に創世神プライマスの手によって生み出された戦士のため、新たなTFを生み出す事ーつまりTFによるTFの誕生ーが許されてはいなかった。

ところがジアクサスを指揮官とする新生代G2トランスフォーマーを名乗る集団は自らの手でTFを誕生させる技術を発見する。しかしながら、力技での誕生にて負の副産物として闇のエネルギーが放出される。そのエネルギーが蓄積されある時意識を持つようになった。ただひたすら飢えのみを感じ全てを喰らい尽くす闇のエネルギー体こそがスウォームの起源なのだ。

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G2=新世代を自称するジアクサスさん

暴力的に拡大するスウォームがTF達を窮地に追い込む中で、オプティマスは自らを犠牲にしマトリクスを展開、マトリクスの中に眠るプライマスの善意を与え、際限の無い飢餓感が満たされたスウォームは知的生命体ヴォックへと進化する。

こうしてG2時代にオプティマスの手によって飢えにより全てを貪り食うスウォームは知性を手に入れたヴォックへと進化する。この一連の流れを組んでいるのがビーストウォーズにおける第4の勢力「ヴォック」となっている。

ヴォックの贖罪

G2においてスウォームの進撃は地球=人類にまで到達しており、ヴォックは自身が過去に破壊してしまった地球をより良い形でリノベーションしようと画策。更には自身が触れたマトリクスの叡智を体現し、人類という種族をより平和的な生き物へと再生させる為に地球に実験所も呼べる環境を配備し、その進化をより良い方向へと促すために監視しているのである。※そして失敗した場合、現在の環境は一度破壊され、再び生命の誕生からリクリエーションされる。実際の所めちゃくちゃえげつない事をしているのだけど超高度な知性と崇高なる意思を持つヴォックにとって、目的に向かうための"過程"はさして問題ではないのかも知れない。

ビーストメガトロンが大量のエネルゴンを求めて地球へと到達したように、この地球の地中には大量のエネルゴンクリスタルが配備されている。このエネルゴンもヴォックによって配備されたもので、その目的とは人間がある程度の文明に達した際にヴォックの導きのもとに究極のクリーンエネルギーであるエネルゴンを与えるためであったり…と、ビーストウォーズの舞台となる地球は完全にヴォックの支配下となっている。更に言うとこの地球の地中の到るところに配備されたエネルゴンは後のG1アニメへの伏線にもなっている。

もちろんこれは非常にディープで、直接的に明かされる設定では無いのかも知れないが、ストーリー上でオカルティックにチラつかせる為のものとしては非常によく出来た基礎となっている。

特にアークでのG1オプティマスとの邂逅のみならず、G2というコアなバックグラウンドを取り込む様は圧巻の一言。製作者のとてつもない熱量を感じることができる設定だと感じている。

 

原作者かく語りき

以前のポストでも触れたように国内においてビーストウォーズを語る上で音響監督である岩波氏が訴えた

内容が暗くて難解なのでもっと受けるように面白くした

※非常にざっくり

 と言った内容。それによるアドリブ肯定派と否定派のグレートウォーは今後も常に付いて回ると思うのだが。

 

これに対して僕は原語版のビーストのストーリーを担当したラリー・ディティリオ氏のインタビューでの回答をどうしても忘れることが出来ないでいる。

Q.BWはタイアップ作品としても非常に優れた作品であると思いますが、基本的にタイアップ作品や子供番組についてどうお考えでしょうか?

A.正直に言えば、私はタイアップ作品は好きではありません。私は何度もこの手の仕事をやっていますが、問題はいつも同じです。調和した矛盾のないストーリーにする事よりも、新製品の発売に合わせる事が常に要求とされます。

そして、メーカーが次のシリーズをスタートさせようと思った瞬間に番組が終わってしまうため、例え良いストーリーのアイデアがあったとしても十分な幕引きを迎えることが難しいのです。

しかし私はBWはタイアップ作品であったにもかかわらず、いい仕事ができたと思っています。

(中略)

ボブ、私、その他の脚本家も、良い脚本が何本か書けたと思います。

私はこれまでに多数の子供番組に関わってきましたが、一般的にいって、良い作品というのは子供は非常にインテリジェントである、という事に常に敬意を払い、決してことさらに程度を下げた物言いをしない、という意思が見られる作品です。

最良の子供番組とは、家族全員で見ることができる番組…子供も大人も一緒に楽しむことができ、それぞれが異なった何かを得られる番組だと考えています。

 こうしてみるとビーストにおける原語版のスタンスと日本版におけるスタンスはハナから完全に対立しており、なんというかあまりにも真逆すぎるスタイルウォーズっぷりで、本当に悪い冗談にしか見えないのだけど。

 

しかしながら、「ではビーストは言うほどにシリアスなのか?」というと、むしろビーストって吹き替え改変が至らない「元の映像」の時点でもコメディーパートはふんだんに盛り込まれており、ギャグとシリアスの緩急は十分についているんじゃあないですか。

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ビーストウォーズメタルス26話、球体の潜水艇ピンボールのように跳ね回り目にスコアが表示されるラットル。ギャグ色の強いこの話に海外では「ふざけすぎ」と批判の声が上がっていたりする

過去作に多大なるリスペクトを感じさせるバックボーンを持たせ、それをちょびちょびと匂わせつつ、ただのファンサービスに終わらずに挑戦的な新基軸にてキッズもごっそりと勝ち取り、結果として本来の客層であるキッズと既存のファンの両方を唸らせた。

また氏の言う「子供は非常にインテリジェントである、という事に常に敬意を払い、決してことさらに程度を下げた物言いをしない、という意思」という部分に僕は多大なるリスペクトを感じざるをえない。

 

個人的にビーストウォーズはTFの知識が無い状態で見ても楽しめて、知識が入れば入るほど丁寧に作り込まれた他の作品とのつながりを発見できるような、2度めの視聴でも何かしらの驚きを与える、とてつもない情報量の上に展開されている非常に重厚なサーガだと思うわけなんですよ。

個人的にはやはりこれを「吹き替えが面白い」という表面的な部分でストップをかけてしまいストーリーやキャラを大幅に改変することで本来の魅力・これから楽しめる気付きからあえて遠ざけてしまう事は非常にもったいないことだと思うのだ。

 

ウルトラ・メガ・長え

ここまで読んでくれたあなたには本当にお疲れ様としか言いようがない。罰ゲームかなにかなのかい?本当はプロトフォームXの登場回やダイノボットと幻の47話とか色々と書きたかったんだけど、長いよ馬鹿、マジで。長いよ馬鹿。

という訳でその辺の話はまた次の機会に。ただ、この記事を書いててちょっと色々と厳つすぎて今はゴリラを見た瞬間に吐瀉ってしまうそうなので、しばらくは勝手気ままにやろうと思う。いや、基本的にいつだって勝手気ままに書いているのだけど。

 

トランスフォーマー TFアンコール リターンズ コンボイ

トランスフォーマー TFアンコール リターンズ コンボイ