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くるめろとは違う

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雑記:トンネルを抜けてイーハトーブを目指して行こう

TRIP

雑記

 

新宿のミラノ座が閉館する

東京に住まわれていない方にはピンと来なさ過ぎて申し訳ないのだけど、新宿のコマ劇近くにあった一際薄汚い新宿ミラノ座が閉館する。ミラノ座は新宿コマ劇場という建物の近くにあるのだが、コマ劇すらも無くなっているのでなんと言っていいのやら。とにかく個人的に新宿で一番いかがわしいと感じている西武新宿駅付近、新宿駅から歌舞伎町を越えていくとミラノ座はあり、近辺の施設は少しスリリングだというのに、この映画館は映画を見ることに関して最高のエクスペリエンスを与えてくれる場所でもあったのでとてつもなく残念である。

 

整列する街並み

昨今のシネコン、新宿で言えばバルト9やピカデリー等、最近の映画施設はとにかく綺麗でサービスも充実している。地方であっても、例えば僕が実家に帰ると映画を見る事が出来るのは馬鹿でかいイオンのみとなっており、そこも最近馬鹿でかくぶっ立てられたのでこれもまた変わりなく綺麗だ。

映画のチケットはネットで好きな席を予約できるし飲食も充実していて、話題の映画ともなると商品やショップが期間限定で展開されたり、展示が開かれたりもする。清潔だ。とてもクリーン。未来とはこうあるべきだと言う然るべき姿であって、サービスが溢れかえっている。しかし、僕は少しばかり退屈だ。

*余談だけどこういう所は施設の名前まで退屈だ。どうやったら人の琴線に触れない、完全殺菌されたような名称を思いつくのだろう。個性や感情をすべて排除しきったコンピューターの人工知能が「人に一番不快感を与えない名称」として叩き出した様な施設名称は、サラサラと砂のように僕の右耳から左耳へとすり抜けていき、数分後にはそこを通っていった事すらも忘れてしまいそうな、ソフトさだ。

 

オリオン座

僕が子供の頃、田舎にはオリオン座と銘うった映画館と文映レッド・イエロー、二館が商店街をはさみ双璧を成していて、小さな県庁所在地の街で熾烈な戦いを繰り広げていた。

その頃の映画館はというと、立ち見や途中退場は当然のことであって、入れ替え等も無く1日中映画館に居ることも可能。そんなわけか、僕の記憶の中の映画館というのはいつも雑多な歓楽街の中で、喧しく、そしてとても賑わっているそんなイメージが染み付いている。

そんな中、僕が高校生になる頃にシネコンなる、劇場をぶち込みまくり、清潔でサービスも行き届いた巨大映画館が隣町で新風を起こし、そして僕が高校生をやめなければならない年頃に、長きに渡り栄華を極めた僕の街のオリオン座はこの世を去った。このシネコンの登場からわずか三年で。

最後に見たのは高校生だというのにレイトショーで。その映画も風きり直後だというのに夜10時頃から始まった回の観客は僕一人で、誰も居ないホールで、「パンフレットを売ってくれ~」とかそんな類の事をちょっと大声でアピールしてみたら、フィルム技師であろうおじいさんがやってきて、かなりアバウトにパンフレットを売ってくれて。(なんてエクスペリエンスに満ちた映画鑑賞なのだろう)

そういえば、映画館の大きな手書きのポスターを見たのもそれが最後だった。

 

トンネルを抜ける意味

僕の中での映画館というのはつまりこんな感じだったわけで、若者として多感だった感覚を一つ研ぎ澄ませていった思い出的なぽ~ろぽろもそんなわけで。これは田舎情緒を引き立てるための「北の国から」風なわけで。

話を新宿ミラノ座へと戻すと、つまり新宿のミラノ座は正に現代に生きるソレであって、僕の愛した映画館のあるべき姿だった。

とにかく、雑踏と喧騒と歓楽街。あと怪しげなネオンとおねいさんや、おっかないおじさん。そういったイリーガルてんこ盛りのトンネルを抜けていくと現れる不思議な場所なのだ。時代を感じさせる、昔は豪華であっただろう佇まい、あからさまな赤じゅうたんと、防音してますよと言わんばかりの、革張りのソファーのような劇場の扉。場内の階段を照らす足元のランプは黄色く、ポップコーンがまず確実にこぼれている。チケット売り場は通りに面していて、無愛想なおばさんがインサイドしている。

ほら、宮崎駿桃源郷的なモノへ向かわせる時に潜らせるトンネルのような、そんな「予定調和と混乱」バランスとカオスの境目を日常にもたらす風景。2000円前後で手に入れられる異質との道を繋ぐ切符だったわけなのだ。映画館は。

そうなってくると、やはりシネコンは少しばかり退屈だ。整然と並ぶスクリーンとポスターに綺麗な身なりの職員。映画を見終わった後に見る景色はアパレルショップや、連続するエスカレーター。とにかく、整然。すべてが調和的であって。うん、退屈だ。記憶を探っても現れるのはいつだって、綺麗なホールとエスカレーター。あの映画はいつ見たか、記憶を探っても手繰り寄せる綱はいつだってエスカレーターで、エスカレーターに、カオスは無い。

だって、上り下りする黒い階段で、綺麗と来ている。記憶に残留するような、強い何かが足りない。

 

トンネルを抜けてイーハトーブを目指して行こう

とにかくそんなヤクザな世界を抜けていくようなミラノ座は、毎度僕に鮮明な記憶を植え付けてくれたので。例えば僕が東京で学生をしている頃。

その頃僕は就職が決まりサッドな気分で就職先からとっておくように言われた普通免許の取得の為に、新宿の街を教習車でクルージング()していた。9月頃で台風が来ていたような気がする。教習の終わりと共に嵐が止んでいて、曇天の中、歌舞伎町の雑踏のいかがわしいトンネルを抜けて、一人なんとなく見ようか迷っていた新劇場版のエヴァンゲリオンの1作目を見に行った。映画も良かった。公開直後でお客さんのテンションも高く、次回予告のお約束前に一人スタンディングオベーションをフライングした馬鹿が居たけど、なんだかそれも悪くはなかった。楽しかった。

映画館を出ると台風が抜けた直後の綺麗な空から黄色い夕日が差して、コマ劇前の広場にはホームレスが横たわり、スーツのちゃらめなお兄さんが増えて、近くの髭ガールっていう有名なヤバめのオカマバーから呼び込むドラッグクイーンの手招きを超えて、空気が少し、透き通って見えた。滅茶苦茶で支離滅裂で、失礼だが少し小汚いオブジェクトの繋ぎ合わせだと言うのに。そこは確かに空気が透明で、きれいだった。

少なくとも限りなく清潔に、整然と立ち並ぶエスカレーターの海や、小奇麗なアパレルショップに佇む笑顔のショップ店員の渦よりも。それは、10年近くの月日が経った今も僕の脳裏に大きく爪あとを残すほどに。

トンネルを抜けて僕は、そういったイーハトーブを目指すのだ。

 

そんなミラノ座が最後大奮発してくれるんだって

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なんと12月20日から、名作が500円で見れるそうだ。僕はまだ小さい頃に見たエヴァ旧劇をとにかくもう一度劇場で、ミラノ座で見たいので確実に行く。もしあなたがお近くにお住まいであれば、そんなバックトゥ90's、トンネルを抜けた先のイーハトーブ新宿ミラノ座を是非ともチェックしてみては如何だろうか。

 

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